融資申請で銀行が嫌う勘定項目について
銀行に融資の申請をする際に使用する決算書には、銀行がマイナス評価をする項目があります。 税理士が税金対策のために行った工夫のせいで、融資が受けられなくなるというケースも少なくありません。 決算書に対する価値観は、税理士と銀行では大きなズレがあります。 顧問税理士が問題ないと思っていても、必ずご自分で確認しましょう。 |
1.「貸付金」勘定項目
貸付金とは、所定の期日に返済してもらう約束で貸した資本のことです。
これは銀行が最も嫌う項目のため、計上してはいけません。どうしても他の勘定項目で処理できない場合は、銀行に対して
①貸付先との関係性、
②貸し付けた資金の使途、
③返済条件等、
について、詳しく説明しましょう。
ただし、貸付金が毎年同じ金額で計上されていれば、どのような説明をしても、銀行は返済されない不良債権である」とみなし、自己資本額から貸付金の金額分を減額して評価します。
自己資金額が減額されると格付けが下がり、金利が上がってしまいます。
なぜ、貸付金がそれほど嫌われているのでしょうか。
それは、この項目が粉飾決済に使われやすいからです。
たとえば、事業と関係のない接待費や、使途不明な支出を処理するときに、さらには費用として処理されるべき支出を貸付金という「資産」として計上することにより、会社の利益を金額分だけ大きく見せるという方法にも使われます。
銀行は不正が嫌いなので、貸付金は絶対に計上してはいけません。
2.「仮払金」勘定項目
仮払金とは、後で清算する目的で先払いしたお金です。
たとえば、急に地方の顧客のもとへ商品の修理に出向かなければならなくなり、社員に10万円渡して戻り次第清算するように指示を出したとします。
その10万円は戻ってきてから清算するように指示を出しました。
社員に支払った10万円は清算されるまで経費として確定できませんので、流動資産として計上されます。
これが仮払金です。
決算書を黒字にするために清算の必要のないものを仮払金にしたり、意図的に清算せずに資産として計上したままにしておいたり、使途不明金を仮払いにするというケースがあるため、銀行にとっては「疑わしい勘定項目」です。
実際に仮払いを計上せざるを得なかった場合は、備考欄に経緯を記載しておき、さらに直接銀行に説明をして、疑いを完全に晴らしておきましょう。
3.「(増加する)売掛金」勘定項目
売掛金と売上高は連動しています。
そのため、売上が増えれば売掛金も増えます。
このような状態であれば、売掛金の増加は何ら問題ありません。
問題となるのは、売上高の増加よりも、売掛金の増加が大きい場合です。
この場合、銀行は「会社の資金繰りが悪化している」ととらえます。
基本的に、売掛金のサイクルは長くても3ヶ月です。
それが回収できていないのであれば、不良債権が発生していると疑われるのは当然です。
特別な事情があって、販売先からの回収が滞っているとしても、それは本当に回収できるのか、根拠のある説明が求められます。
売上高に対して、売掛金の額が不自然に大きくなっていないか、もしもそうなっていた場合は、その理由をしっかり確認して、銀行に説明できるようにしておきましょう。
4.「(増加する)棚卸資産」勘定項目
売掛金と同様に、売上が伸びれば在庫も増えます。
売上高の伸び率に連動して棚卸資産が伸びていれば問題視されることはありません。
しかし、売上高の伸びよりも棚卸思案の金額が伸びている場合、銀行は2つの状況を想定します。
1つは、商品等の売れ残りが増大して、不良債権が発生している。
もう一つは、利益確保のために、在庫を水増ししている。
銀行は、数多くの決算書を見ていますので、同業他社に比べて、その在庫が平均的なものか、そうでないかが分かります。
過度に多い場合は不良在庫であるか、時価よりも高い金額で計上しているとみなし、資産価値を低く評価します。
5.「開発費」勘定項目
開発費とは、新市場を開拓するための市場調査費、企画調査費、広告宣伝費、コンサルタント料など、未来売上につなげるために投入した資金のことです。
支出時は「売上原価または販売費及び、一般管理費」として処理されますが、開発費として繰延資産にも計上できます。
しかし、開発費として計上できる範囲が曖昧であり、その曖昧さを利用して、費用で計上すべきものを開発費として計上することで、当期の利益を増やしたように見せかけることができてしまいます。
黒字確保のために計上しているのでは?と疑われる可能性が高いので、説得力のある説明ができなければ、計上しない方が賢明でしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
銀行が融資を行う際に、決算書でマイナス評価をする勘定項目についてまとめてみました。
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