賃上げで融資金利が0.5%引下げに?日本公庫の特例制度

投稿日:2026年10月16日

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従業員の賃上げを考えている中小企業にとって、人件費の増加は大きな負担となります。

一方で、従業員の待遇改善は人材の確保や定着にもつながるため、今後の事業を考えるうえでのテーマのひとつとなります。

そんな中、日本政策金融公庫では従業員の賃上げに取り組む事業者を対象として、融資の利率を一定期間引き下げる「賃上げ貸付利率特例制度」を設けています。

今回はこの制度の仕組みや利用できる事業者、そして賃上げが計画通りに進まなかった場合の注意点について解説します。

 

賃上げに取り組む事業者は融資金利が0.5%引下げに

日本政策金融公庫の「賃上げ貸付利率特例制度」は自社の従業員の賃上げに取り組む事業者を対象とした制度です。

国民生活事業では、新たに事業を開始して3ヶ月以上経過している事業者で雇用者給与等支給額が最近の決算期と比較して2.5%以上増加する見込みがあることなどが要件となっています。

最近の決算期ですでに雇用者給与等支給額が増加している事業者も対象に含まれます。

この制度を利用すると、各種融資制度に定められた利率から0.5%が引き下げられます。

適用期間は貸付日から2年間で、利率の加減は0.3%とされています。

 

たとえば、通常の融資で適用される利率が2.0%だった場合、制度の対象となれば、原則として2年間は1.5%の利率で借り入れることになります。

ただし、すべての融資が対象になるわけではなく、融資制度によっては利用できない場合があります。

また、融資の審査そのものが有利になる制度ではありませんので「賃上げを予定しているから融資を受けられる」というものではない点も注意が必要です。

 

「雇用者給与等支給額」には何が含まれる?

制度を検討する際に気になるのが「2.5%以上増加」という基準です。

ここでいう雇用者給与等支給額は、従業員に対して支払う給与等の金額を指します。パートやアルバイト、日雇い労働者も対象となります。

一方、法人の役員や個人事業主の家族従業員は雇用者には含まれません。

そのため「会社全体の人件費が2.5%増えればよい」という単純な判断ではなく、制度上の「雇用者給与等支給額」がどのように増加するのかを確認する必要があります。

たとえば、従業員に対する給与の引き上げや新たな従業員の採用によって、雇用者給与等支給額が前年と比較して2.5%以上増加する見込みであれば、制度の利用を検討できます。

反対に、役員報酬を引き上げただけでは、この制度の基準を満たすことにはなりません。

 

「賃上げする予定」だけで判断するのは注意が必要

この制度を利用するうえで、特に注意したいのが、融資を受けた後の賃上げです。

制度は、単に「今後、賃上げしたい」と考えている事業者に対して無条件で金利を引き下げるものではありません。融資の際には、賃上げの計画を立て、その後の実績について報告することになります。

実際に、日本政策金融公庫には「賃上げ報告書」の様式が用意されており、融資申込時に提出した賃上げ計画について、実際の労務費・人件費などがどの程度増加したのかを報告する仕組みがあります。

賃上げ報告書記入例|日本政策金融公庫

 

2.5%の増加を達成できなかった場合には、その畏友を記載する欄も設けられています。

ここで重要なのは「とりあえず制度を利用して、実際の賃上げは後から考えればよい」とは考えないことです。

融資時点では賃上げを実施する見込みがあったとしても、その後の業績や資金繰り、従業員の退職・採用状況などによって、計画どおりに給与等を増やせない可能性があります。

また、公庫の融資制度には利用要件を満たさなくなった場合に、繰上償還となったり、優遇された利率と通常の利率の差額を支払うことになる場合があります。

そのため、制度を利用する場合には「金利が0.5%下がる」というメリットだけを見るのではなく、実際に賃上げを継続できる事業計画になっているかまで含めて検討することが大切です。

 

賃上げと融資はセットで資金繰りを考える

賃上げを実施すると、従業員にとっては給与が増える一方、会社にとっては毎月の固定的な支出が増えることになります。

たとえば、従業員の給与を引き上げた場合、その影響は給与そのものではありません。

社会保険料などの負担も増えるため、年間の資金繰りにどの程度影響するのかを事前に確認しておく必要があります。

 

一方で、設備投資や店舗の改装、車両購入、新規採用などを予定している会社では、こうした支出と賃上げが重なることで、資金需要が大きくなることもあります。

賃上げ貸付利率特例制度は、こうした事業者にとって融資の金利負担を軽減できる可能性がある制度です。

ただし、「0.5%金利が下がるから借りた方がよい」という単純な話ではありません。借入額や返済期間によって実際の利息負担は変わりますし、そもそも賃上げをおこなったあとも無理なく返済できる資金繰りになっているかを確認することが重要です。

 

まとめ

日本政策金融公庫の「賃上げ貸付利率特例制度」は一定の要件を満たして従業員の賃上げに取り組む事業者について、融資の利率を2年間0.5%引き下げる制度です。

ただし、制度の利用には一定の要件があり、融資後には賃上げの実績を確認するための報告も行われます。計画通りに賃上げできなかった場合の取扱いについても注意が必要です。

賃上げを予定しているからといって、必ずこの制度を利用できるとは限りません。

実際の融資では、事業内容や資金使途、返済計画などを含めた総合的な審査がおこなわれます。

賃上げと設備投資などを同時に検討している場合は、金利だけで判断せず、今後の資金繰り全体を見ながら融資計画を立てることが大切です。

 

 

参考:賃上げ貸付利率特例制度|日本政策金融公庫

 

 

 

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